夏だ!アニメMV祭 〜天〜
94年のBehinds BarではSlick Rickが投獄中だったこともあり、MVではアニメーションが採用された。Slick Rickの顔に鉄格子の影がかかり、白人の警官がステップを踏む。哀しくもユーモラスな映像は実写では描けなかっただろう。そして、時に謎かけのように記号化されたHIPHOPのリリックは、実写よりも絵画や図形を通してのほうが伝わってくるものがある。
また、「アニメ=子供向け」という一種の固定概念もHIPHOPという新しい文化を伝播することに一役買うこととなった。ルーニー・テューンズのキャラクターとマイケル・ジョーダンが共演を果たした「SPACE JAM」では多くのHIPHOPアーティストたちがサウンドトラックに参加した。
Hit Em High などを観るとB-Real、Coolio、Method Man、LL Cool J、Busta Rhymesとそうそうたる面子がいるが、とても子供向け映画に出していい顔ではない。だが、アニメーションを利用することでHIPHOPをより幅広い層にまで届けることは出来たと言えるだろう。
アニメーションが持つ伝わりやすさ、表現の自由度、そういったものが音楽に別の方向から光を当ててくれることがある。今回はそんなアニメーションを使ったMVを。
①
Lil Dicky - Professional Rapper
お調子者のLil DickyがRAP GAME INC.に就職するためSnoop Dogの面接を受けるという内容。ジャグジー完備のオフィスはいろんな意味でブラック企業。圧迫面接の挙句、最後の試験でフックを歌わされる姿が痛々しくて笑える。
秘書がとにかく有能。
②
A$AP Rocky & A$AP Ferg - Cat Mob
A$APの飛車角がネコに扮してタッグを組んだ一曲。動物の擬人化は日本よりアメリカのアニメーションで良く利用される手法だそう。一説によると、人種が多様過ぎて登場人物の人種によっては発言に気を使わないといけないらしい。このMVの結構えげつないリリックもネコと言うフィルターを通して観るとマイルドに受け入れられる不思議。
③
Mac Miller ft. Kendrick Lamar - Fight The Feeling
James JarvisというイラストレイターがNIKE SBのスニーカーとコラボレーションした時の一曲。ミニマルなデザインのキャラクターがどこまでも続いていきそうな一本の道を走っていく。曲名どおりの観念的な世界をアニメーションを使ってシンプルかつ奥深く表現している。
④
Sean Price - How Sean Price Stole Christmas
「F*ck Christmas」から始まる最悪のクリスマスソング。
2015R.I.P.。リンク先から残されたSean Priceの家族へサポートが出来る。