儚屋本舗ブログ

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チリーが拓くチェスの新境地 〜天〜

 

 これは二人の男の戦いの物語。
一人は愚鈍で、野暮ったく、
一人は若く、英気に溢れていた。
一見、住む世界が違うような二人。
だが、彼らには因縁があった。
そして今こそ、その決着をつける時が来たのだ......。

 あらすじはおそらくこんな感じだろうと思う。ちょっと分かりにくいが、この二人はチェスのプレイヤー。その特訓方法が変わっていて、

・グラウンドで俯せになりながらチェス盤を睨みつける。
・駒を動かすための素振りをする。
・駒の絵を描く。

など……。いや、チェスの特訓でそんなことしないだろ、というものばかり。

 曲を演奏するのはピアニストでもあり、プロデュースや歌、果てはラップまでこなす超マルチな才能を発揮するChilly Gozales。彼の「Never Stop」はAppleのCMソングとしてもお馴染みだ。今回はうだつが上がらなそうなチェス・プレイヤー役としてしっかり出演し、老トレーナーを従えロッキーばりの特訓風景をかましてくれている。
 カナダにいた頃は無声映画に伴奏をつける仕事をしていたためか、曲自体も今回のようなドラマ仕立てのMVと相性が良い。どう見ても滑稽な筈のチェスの特訓風景も何故かスタイリッシュに見えてくる。

 現在はパリを拠点として活動しているが、元々はカナダ出身で、「I Am Europe」という曲名は、自分自身が今はヨーロッパ人であるということと共に、よそ者であった彼から見たヨーロッパ像なのかなとも考えたりできる。デフォルメされた「チェス」というものが、「ヨーロッパ」的なものの象徴であり、このMVのストーリー自体も歌詞にあるような「長過ぎる小説」「センチメンタルな歌」のようなものとなっている。

 パリに住むカナダ人が見たヨーロッパとは。

 ユニークな言葉選びもさることながら、ヒョウ柄のタンクトップの青年のセンスも際立つMV。

Chilly Gonzales - I Am Europe

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