儚屋本舗ブログ

儚屋本舗オフィシャルWebメディアより一部の記事を抜粋しています。

ゾンビ考 - 儚屋忍者

f:id:hakanaya:20171007112452p:plain

 

私、「ゾンビ」が大好物です。ゾンビ映画も好きだし、ゾンビの登場する小説やゲームなんかも大好きです。

ゾンビはビジュアル的にグロいので、最初は目をそむけたくなる方も多いのではないでしょうか。しかし、いろいろな作品を体感していくと、もはやそのグロさは全く気にならなくなります。目ん玉が飛び出ていようが、手足がもげていようが、内臓がはみ出していようが、それはなんでもない風景なのです。

最終的には、ゾンビに対して愛らしささえ感じるようになります。ちょっと頭が足りてなくて(たまに障害物をかいくぐってくるゾンビもいますが)、よちよち歩きで(たまに猛ダッシュで迫りくるゾンビもいますが)、とにかく奴らは真っすぐですよね。人間を襲うという点を除けば、実は「かわいい」の部類に入ってもおかしくない性質を持っているのです。

ゾンビ作品の主役はゾンビではなく、そこに描かれる人間たち。本当にこわいのは人間です。パニック映画やシチュエーションホラーなどで描かれるのは、極限状態に陥った人間たちの心理ですよね。「こわい」のは人間で、「かわいい」のがゾンビです。

多くの作品に登場するゾンビの特性には、いくつかの共通点があります。

1.死んだあとに蘇る
これが原点ですかね。墓場でゾンビの片腕がボフっと地上に飛び出てくる光景は、誰もが持つイメージではないでしょうか。

2.人間(動物)を食べたがる
とりあえず肉食です。ただし、ゾンビ同士で共食いはしません。ゾンビにも種存本能のようなものが働いているのか、それともただ腐食した肉を食べたくないだけなのかは分かりません。

3.噛まれると感染する
即効性がある場合もあれば、徐々に蝕まれいつしかゾンビに転化する場合もあります。潜伏期間には個人差があります。

4.頭部をつぶさないとほぼ不死身
身体に銃弾を何発撃ち込んでも致命傷にはなりません。ゾンビという存在の鍵を握るのは脳みそだということですかね。

5.動物並の知能
ここが「かわいい」ところです。基本的に道具を使ったり、ドアを開けたり、高いところに登ったりということはできません。障害物を乗り越えるとしたら、だいたい物量で押し切る感じです。数百体のゾンビが一気に押し寄せたら鉄条網なども突破されます。

ゾンビ作品の舞台設定は規模が様々です。例えば、郊外の小さな町でアウトブレイクが発生したり、細菌研究所でウィルスが漏れた場合など、なんとか狭い範囲で感染を食い止めることができることはあります。しかし、多くの場合は、その地域を空爆して、取り残された住民もろとも焼き尽くすという結果になります。

一方、広範囲に感染が拡大してしまった世界では、社会を支えるインフラは機能を失っています。だいたい以下の状況に陥っています。

1.無政府状態・無法地帯
2.水道・電力・ガスなどの都市機能の喪失
3.貨幣価値の消失

結果的に、軍部の独立、医療施設の独立なども考えられます。

こうなってくると、サバイバルする人間側の行動にもほぼ一定のルールが生まれます。これが、秩序のない世界における秩序になります。

1.ゾンビから逃げる
2.隠れ家を転々とする
3.武器を所持する
4.衣食住を奪い合う
5.仲間を裏切る

などです。

だいたいこんなところでしょうか。ほとんどの作品はこのようなルールに則っていると思います。

つまり、シンプルなのです。

一言で言えば、ゾンビが蔓延する世界で「生き延びる」というお話なわけです。

もう少し掘り下げると、以下のようなルールがあります。

1.ショッピングモールに駆け込み、つかの間の安らぎと高揚を得る
食料もあるし、衣服もある。全部タダです。おまけにゾンビが侵入しない要塞でもあります。だいたいここで楽しげなBGMとともに、男性は普段は飲めないようなちょっと高い酒を飲み、女性は美しい服や宝石を前にニヤニヤします。やがてアクシデントが起きて脱出することになりますが、現実を忘れられるこのつかの間の夢のようなシーンは醍醐味のひとつです。

2.「バールのようなもの」を所持する
ゾンビ相手に、ときには人間相手に、武器は必須です。ナイフや銃器があれば申し分ないですが、そう簡単に手に入るものでもありません。そのへんに転がっているのは、いつだって「バールのようなもの」なのです。そしてそれは、「バールのようなもの」というか、バールです。

3.即席メカニックがいる
やはり移動手段は必要になりますが、荒廃した世界ではまともな車両はなかなか手に入りません。しかしながら、壊れた車をすぐに修理してしまうような男がだいたい仲間にひとりはいます。かつて窃盗の常習犯だった人間なども、ここでは活躍します。

4.即席ヒーラーがいる
これもまた不思議なことですが、少ない医療品や薬の代用品などで負傷者を治してしまうような人がだいたい仲間にいます。プロの医者ではなく、看護婦だったり獣医だったりと、ちょっとはずしてきます。

5.愛する人を始末しなければいけない
仲間が感染した場合、ゾンビに転化する前に始末しなければなりません。それがたとえ家族や愛する人であっても。この別れのシーンはつらいです。

6.強くなりすぎる
サバイバルを繰り返していくうちに、どんなに弱い人間も超人になっていきます。ゾンビをバッタバッタとなぎ倒していくのです。こういう生き残りの人間同士が衝突した場合、かなり巧妙な心理戦とスタイリッシュな戦闘が繰り広げられるに違いありません。

7.謎の組織がいる
軍部なのかなんなのか、荒廃した世界においてもなぜか圧倒的な武力と環境をキープし続けている組織がいます。目的は人々の救助なのか、それとも……というような謎の特権階級です。

そもそも私は「ゾンビ」という存在自体が好きで、もはや芸術だと思っていますが、このような壮大な世界観も同じように好きです。
なかには狭い範囲での逃亡劇を描く作品もありますが、その場合はストーリーがよりシンプルになる分、特に芸術性が高い気がします。

人々が突然アナログな生活を強いられ、弱肉強食という動物的な世界で生き延びる。これは、人類が遠い昔に忘れ去った生きる知恵を取り戻していく作業でもあります。

「グロいのは無理」とか「気持ち悪い」とか思っているそこのあなたも、是非一度ゾンビを体験してみてはいかがでしょうか。

おっと……そろそろ物資が尽きてきたので、次の目的地を定めなければ。

それではみなさん、ヘッドショットをお忘れなく。