Man in the Maze〜玄〜
人生のスタートラインに立ったものは、経験と選択を繰り返し、夢を叶えるために真ん中のゴールを目指す。そこに辿り着くと、今までの道のりを振り返るための最後の機会が与えられる。太陽の光を浴び、その人生は讃えられ、また新たな一歩を踏み出すこととなるーー。
家の近くの千駄木から歩いてほどない谷中の路地裏に、前々から気になっていたお店があった。そこは、アリゾナ州に今も住むネイティヴアメリカンであるホピ族にまつわる服、ジュエリー、小物を扱ったお店で、店のおばさんたちが直々にホピ族の住む地に赴き、輸入し、販売をしている。以前立ち寄ったときにも気になるTシャツがあったのだが、サイズがなかったり、色がなかったりと、見送ることすでに二回。残念ではあるが、いかんせんホピ族との直取引だから仕方ないと思っていた。
年明け早々、息子と散歩中、またそのお店の前を偶然通りかかり、入ってみた。三度目のTシャツチェックになる。すると、かつて見たことのない一つの絵柄が気になった。じっと眺める私におばさんが声を掛けてくれた。
「それは、mazeという柄です。『人間、だれしも路頭に迷うことがあるけども、最終的にはクリエイター(創造主)が迷路の出口に導いてくれる』というホピ族に古くから伝わるモチーフなんですよ」
ホピ族は、人生についての教訓をモチーフを通じて次世代へ託しているようだ。
”man in the maze”はその中の一つ。
「……Mがあれば、買います」
これだと思えるものに出会えたことは勿論、いい話を聴いたものだと清々しい気分になった。
お店のおばさん曰く、ホピ族は、ラジオ配信もしているらしい。「友達が番組をやってるのよ。日本の曲もリクエストしてみてよ」とえらくフレンドリーに教えてくれた。またそのプログラムのステッカーがイカしてること! こちらとしては、ホピ族土着のサウンドが気になってしかたないのだが。
生きていくための知恵をモチーフにして伝えていくこと、祖先から受け継いだ確かな思いを形にしていくことは尊いことだと思う。予言者でもあるホピ族が日本へのアメリカによる原爆投下を予知していたということを知り、その思いは確信に変わった。